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いい宿求めてウロウロします。してます。

ベネッセハウス⑤

【データ】
訪問年月日 2013年11月某日から2泊
宿泊プラン 特になし(15時チェックイン、11時チェックアウト)
部屋タイプ ビーチスイート
宿 H P

【宿泊記録】

「パチッ」

パークラウンジの音楽が止まり、電気が消えました。しーん。
ベネッセハウス滞在2日目の正午すぎのことです。よもやこれが全島停電に端を発した、長い停電の始まりとは夢にも思わなかったのでした。

☆ ☆ ☆
仕事柄、妻とまったく休みの合わなかった夏休みを無為に消化し、もうそろそろ夏休みの代わりのような休暇が欲しいなと思いそうな頃、予定を入れました。先日書いたサンライズ出雲・瀬戸で帰省し、お互いの実家に1泊ずつし、ベネッセハウスに2泊して帰る、というプランです。もう楽しみ過ぎてそれまでの仕事はすべてこの予定のための辛抱だと思ってやっていました。

さて、今回のベネッセハウス訪問はバスを初利用してみました。
これまではずっと宇野線、急ぐ帰り道はタクシー、みたいなことをやっていましたが、宇野線はともかく、タクシーは岡山まで7,000円とかかかるのでちょっとバカらしいなとようやく改善に着手。するとおのずから浮かんでくるのがバスという公共交通機関です。いや、なんか珍しい乗り物を紹介するみたいな書き方になっていますが、あの普通の路線バスです。

同じく岡山駅でも駅前のバスターミナルから両備バスに乗り込みます。特急と名のつく渋川行き(瀬戸内マリンホテル行き)。乗り換え案内の予定だとわりと早めに着く予定だったため、もしかするともう1本前の船に乗れるかもしれない!と期待に胸をふくらませ乗り込みましたが、あいにく岡山市街での渋滞にあえなく敗退。やはりちょっと時間が読めないところはバスの弱点でしょうね。でも、タクシーとは違って640円で行けるわけですし、宇野線ののんびりした時刻表に合わせなくても、間の時間はバスが補っています。時間帯によっては使わない手はないでしょう。とりあえず今回の収穫は、バスがどういうルートを通ってどのくらい時間がかかるか(どのあたりが混むか)を把握できたことと、宇野港に一番近いバス停が築港銀座だと分かったことでした。

宇野港の直島行きフェリー乗り場は相変わらず小ぢんまりした感じですが、待合室ではwifiが使えたのですね。今回の帰省に合わせてようやくiPadminiを入手した我々。セルラー版なので携帯みたいにどこでもネット接続はできるのですが、データ通信量を気にしなくてよいのならそちらのほうがうれしい。認証パスワードなんかもいらずにすぐ接続できました。今回、初日の夕食はレストランではなくてお弁当を頼んでみたのですが、空腹が怖くてなんとなく宇野駅前のセブンイレブンで食料を買い込み、乗船したのでありました。

日曜日の直島はさすがに混雑していました。
船着き場にも折り返し乗船する人々が列をなし、町中にもまだまだこれから回りそうなレンタサイクルの人々が。大型バスなんかもいて、結構お年をめした方々も団体で。みんな楽しそうです。故郷にこんないいスポットができてうれしいなあ、と思うも、実はここは岡山ではなく、香川県なんですね~。うらやましい香川。

港からはホテル専用のシャトルバスで。ある種の手違いでビーチ棟に宿泊することになりましたが、バスの降り場はベネッセハウスパークということで。パークフロントには結婚式でお世話になったMさんもいらっしゃって、ごあいさつ。さあ、楽しみな2泊3日の始まりです。

ビーチ棟はパーク棟からテラスレストランを通り過ぎた先、海のド真ん前にあります。どのくらい前かというと、満潮だとちょっと浸かるんじゃないかと懸念するくらいです。運のいいことに2階客室だったので、部屋の中からはもう海しか見えません。ベランダまで出れば下の道も見えますが、中から立って見てる分には海上コテージ気分です。いやあ、この眺めはすごい。山育ちに海の風景は目のごちそうです。

さて、2泊もあるのでまずは風呂です。
露天風呂も大浴場もないベネッセハウスの風呂の何が楽しみかというと、シャンプー類の香りです。どこのシャンプーかというと、「THANN」というブランドのやつです。もうこれは単に個人の好みとしかいえませんが、最初に来た時からこのシャンプー類の香りが好きになっちゃいまして。ベネッセハウスに来るとこれをお風呂でボトルで使えるという。これは超個人的ですが贅沢だなあと感じる瞬間なのです。
ちなみに今ちょっと調べてみたらこのブランドは他のお宿でもアメニティで使われているそうで、一覧が載っていました。パークホテル東京、熱海 ふふ、ATAMI 海峯楼、箱根翠松園…おお、なんか錚々たる顔ぶれですね。THANNがあるから泊まりに行く、とまではいかないと思いますが、知らずに行って偶然お気に入りのものがあったりするとうれしいですよね。
風呂にゆっくり浸かり、THANNのシャンプーで体もきれいにして、夕食まで部屋でゴロゴロ。お弁当が届くのを待ちます。

部屋への電話が夕食の合図。「これからお持ちします」とのひと言から待つことしばらく(ビーチ棟はどこからも遠いので意外に来ないっていう)。インターフォンを鳴らしてスタッフの方が持ってきてくださいます。
届いたのが「さざ波」。いつのころからかある、ミュージアム棟の日本料理レストラン一扇によるお弁当です。ベネッセハウス滞在中、部屋で食べられる食事はこれくらいです。仕出し弁当と違って、一扇のメニューからわりといいとこ取りで作られてるもんで、「食べるものがない…」と途方に暮れなくてすみます。一方、翌日の夕食で頼む予定だった一扇の「海」コースとメニューがほぼかぶっていたこともあり、フロントに頼んでテラスレストランでの食事に変えてもらいました。

食後も多少ゴロゴロしてからお待ちかねのパークラウンジへ。このラウンジが好きなんです。ほんとになんてことのないフリードリンクのラウンジなんですが、コンクリート打ちっぱなしの壁の反対側には全面ガラスの窓。そして窓からは風にそよぐ現代アート作品と、ここでも海。コーヒーかなにか飲みながら本を読むもよし、ぼーっと外を眺めるもよし。何してても何見てても絵になるラウンジです。夜はわりと暗めなので、何か読むなら明るめの場所を選ぶべし。
ちなみに、フリースポットだと聞いていたのですが、接続方法が分からずじまい。まあ何か特段したいことがあったわけでも、切羽詰まっていたわけでもなかったので、スタッフの方に聞くこともせず。次回は事前に聞いてみようかなあと思ったのでありました。

第一夜明けて翌朝。2日目の朝食はテラスレストランです。
去年の滞在では一扇での朝食だったので、テラスレストランでの朝食は久しぶりです。結婚式のとき以来ですね。
朝食はビュッフェ形式。卵料理つきで、僕は具の選べるオムレツ、妻は両面焼きの卵焼きをお願いしました。
ビュッフェはそれほど品数が多いわけではないですが、雰囲気があってよい感じです。パンがおいしいのがうれしい。ビュッフェではテーブルにお皿をズラッと並べるんじゃなくて、何回も料理を取りに行けるのが幸せ、とサカキシンイチロウさんのコラムで見た気がして、それ以来そんな過ごし方をしています。ベネッセハウスにも血眼で料理を取りに来るおばちゃんとかいますが、まあ、それはそれで楽しい風景のひとつです。


☆ ☆ ☆
さて、今日もまたお気に入りのパークラウンジに行って、家でとっている日経新聞以外の朝日、読売、毎日新聞をゆっくりと読み終えたころ、その瞬間はやってきました。


パチッ。


照明は消え、音楽は止まりました。

ん、停電か?島だし、たまにはあるのかな。
おそらくそう思ってしばらくは気にもせずまた思い思いの過ごし方を再開する我々宿泊客。

それでも、しばらく。

いくらなんでも復旧しないなあ…顔を上げると同じく顔を上げた他のお客さんと目が合ったりして。まあ、せめてコーヒーくらい。おや、コーヒーも出ない。そうか、電気だもんな…。

そうしてスタッフさんが駆け込んできます。
「原因不明ですが、ただ今全島で停電中です。」

おいおい、全島なんですか。山奥育ちの僕は「どうせ、山の上のアンテナみたいなのが倒れたんじゃ?」なんて思っていましたが、どうも本州(直島は中国電力から供給を受けているらしい)から電気自体が来ていないそうで。
どうする?と妻と相談。もうしばらくラウンジにいて、その後は部屋に戻ってみようかとそういうことになりました。

ラウンジから一歩出てみると、おお、いつもより明るい。パークラウンジから出たところには杉本博作品がたくさん並んでいるのですが、いつもは真っ暗な中に白い間接照明で照らしてある感じなんですね。それが今日に限っては非常灯がそれに代わって点灯。暖色系の明かりに照らされていたのでした。これはこれで貴重だね、とパーク棟を後にする僕ら。やってるのかな、と足を踏み入れたショップでは、お店のおねーさんが売上データについての問合せを一生懸命しておられました。停電中の思いを共有しようと話しかけてみようかと思いましたが、普通にご迷惑だなと思い退散。

それにしても風の強い日でした。飛ばされそうな思いでテラスレストランの前を横切り、何か飛んでこないかとキョロキョロしながらビーチ棟までたどり着きますが、エントランスがカードキーに反応しないというハプニング。カードキーを読み取ったよという意味で点灯する緑のランプは乾電池駆動らしいのですが、それと鍵を連動させているのは電気だそうでまったく開かないという。まいったなあ、もう一回パークのフロントに戻る?とか言ってたところに中から人が。見回っていたスタッフさんです。開けてもらって無事入れました。部屋のカギは大丈夫とのこと。とりあえずようやく部屋に帰りつきました。


そういえば昼ごはんどうする?という話になったものの、まあレストランなんかも無理だよね…という話にしかならず。と、ふと気づきました。そういえば宇野でいろいろ買い込んできたなあ…それ食べようか。
ほんとに今回の旅は神がかっていました。まさかこんなドンピシャでおやつが役に立とうとは。朝ごはんを遅めにたっぷり食べていたのも奏功しました。水も止まっているのでたしかにトイレも1回しか流せないのですが、加湿器に入れていた水をトイレのタンクに投入したりしてまあなんとか。どうせのんびりしにきたんだからと、おやつ食べて本を読むのに飽きたら寝ました。昼寝です。

そうこうしているうちに日暮れです。さすがに夜も同じ状態はきついなあ…とは思うものの、復旧しないのだからしょうがありません。しかし、一方で夕食の時間は刻々と近づいてきます。ベランダに出てテラスレストランのほうを見るも、電気が弱弱しく灯っているだけ。たぶんダメだろうな…と思いつつ、念のためフロントに問い合わせてみました。夕食はどうなるんでしょうか、と。

「レストランのほうは皆様をお迎えする準備ができております。」

なんと。そこまで言われたら行くしかない。一体どうやってもてなすつもりなんだろう…謎は深まるばかりですが、とにもかくにもいざテラスレストランへと部屋を出たのでありました。


レストランではなんとキャンドルの光でテーブルをセッティング。ご不便をおかけします、との声に思わず「大変ですね」と言ってしまう僕。サービスしてくださるスタッフさんも「私たちも初めてのことで戸惑っております」とかなり困惑気味。それでも食事は開始となったのでした。

と、その時。

ぱああ、と電気が点いていきました。待ちに待った復旧です。お客さんもスタッフさんもあれほど目も顔も輝かせた瞬間はないでしょう。あるお客さんの思わずの拍手にみんなつられて、レストランは明るさを取り戻したのでした。こんなことあるんですねえ。なかなかない瞬間に立ち会えたことがみんなをうれしくしたんでしょうね。
スタッフさんは水を得た魚のごとく、明るいレストラン内を縦横無尽にサーブ。フロアマネージャーのような方が各テーブルに声をかけてくださってとても丁寧でした。さーて、遅ればせながら本日の夕食メニューはテロワールのコース。「食前のお楽しみ」から始まり、「瀬戸内海産 天然鯛のマリネ、渡り蟹のファルシ、焼き茄子のピューレ」、「本日のスープ」を挟んで、メインは夫婦で魚と肉をひとつずつ選び、僕の選んだ「本日の魚料理」はスズキのポワレでした。妻は「国産牛ほほ肉の煮込み ポレンタと共に」。そのあと、プレデザートとメインデザートが来て、コーヒー(もしくは紅茶)で締め。お品書きだけ見ると少なそうですが、お代わり自由のパンが出てくるので僕らのおなかはこれで十分いっぱいです。

食後はまたしてもパークラウンジに寄ってから就寝。ともあれ、コーヒーが出るようになってよかったです。
3日目の朝。帰りの新幹線の都合で少し早く出ないといけないので、レストランが開く時間(7時半)を見計らってミュージアム棟に向けて出発。のんびり散歩するには寒いですが、徒歩でぶらぶら行きました。まだ風は強いですが、天気は回復。瀬戸内海に浮かぶ島々が美しいです。ミュージアム棟からの坂を下りた突き当りからの景色は季節を問わず絶景哉。

2回目の朝食はミュージアム棟の日本料理レストラン、一扇で。ここで洋食を頼むというのも結構好きです。こちらはビュッフェ形式ではないですが、いくつかある料理のパターンから好きなものを選ぶ方式(卵料理、肉料理、ジュースなど)。いつも調子に乗って追加可能なフレンチトーストを付けて苦しむというのがお決まりのパターンですが、案の定そうなりました。

ミュージアム棟からパーク棟へはシャトルバスでも帰れるのですが、あまりゆっくりもしていられないのと、歩いても10分かからないくらいの距離なので帰りも歩きで。ちなみにミュージアム棟のアートの展示がいくつか変わっていたのはちょっと驚きました。展示替えなんてやってたんですね。

名残惜しいですが、チェックアウトの時間です。今回はまた全島停電というハプニングがありましたが、我々にとっては特に致命的なことでもなく、また楽しく過ごさせてもらいました。僕らもだんだんといろんないい宿に泊まってきていると思っていますが、人という点でベネッセハウスは超高級外資系ホテルにも負けてないと思います。島という立地がそうさせるのか、瀬戸内国際芸術祭のようなイベントがそうさせるのかは分かりませんが、日本屈指の非日常への対応力がある宿。そんな強みがこのホテルにはあるんじゃないかなあ。そんな気がしてきた5回目の訪問なのでした。


【次回宿泊に向けて】

・そろそろ観光を(今回もするつもりだったがスケジュールミス)
・フレンチトーストは2人で1つ
・次回はフリースポットを活用したい

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ベネッセハウス④ ~そして連泊へ~

【データ】
訪問年月日
2012年9月某日から2泊

宿泊プラン
1泊目:Room 406 オーバル ツイン
2泊目:Room 303 ミュージアム ツイン
ホテルHPから予約(15時チェックイン、11時チェックアウト 食事なし)

料   金
111,810円


【宿泊記録】

○満を持して

 第1回の瀬戸内国際芸術祭、結婚式の相談時、結婚式、と3回で5泊を過ごしたベネッセハウス。期せずして結婚式からちょうど1年後、満を持して特にイベントもないのに連泊の予約を入れました。
 結婚式で大いにお世話になったMさんからは年始に年賀メールをもらっていましたが、今回予約したことは特に伝えておらず、妻とは「行って呼んでもらって挨拶しないとね」と言っていたところ、訪問直前になってメールが。「偶然、予約リストの中にお名前を見つけました!」とのこと。予約を入れれば分かったりするのかな、とその時は思っていましたが、普通は予約受付の部門にしか情報はいかないそうでほんとに偶然も偶然だったようです。こういうところでも縁を感じてしまって、うれしくなってしまいました。

 なお、今回はやっと、やっとのオーバル棟に宿泊です。2泊目はこれまた初めて泊まるミュージアム棟。いろんな意味で満を持しての訪問となったのでありました。


○のしかかる試験勉強

 楽しいベネッセハウスでの休暇の一方、僕には昇進試験の受験勉強がのしかかっていたのであります。これはつまんない。もう休暇中はすべてをなげうって遊んでしまおうとも思ったのですが、逆に気になってしまいそうだったので、勉強道具一式は持っていくことに。試験準備は継続が大事な面もあります(このへんをおろそかにして過去の試験で苦戦した思い出もあり…)。論文試験なので、自作のレジュメと、これからさらに論文のネタを増やすために必要な元ネタの資料をバッグに詰めて持っていきました。

 結果的には…まあ持って行ってやっぱりよかったなと思いました。勉強ができる場所は実はいろいろあって、パーク棟のパークラウンジ。夜は照明が暗くて不向きですが、夜になってまでやるなという話で、昼は景色もいいしフリードリンクだし最高です。宿泊がパーク棟なら僕はほぼここで過ごしたことでしょう。ちょっと棟が違ったので、なかなか入り浸りというわけにもいきませんでした。
 2つ目は、意外な穴場でミュージアム棟のライブラリ。ここが人でいっぱいになることはほぼないと思われ、実際にそう。たまに勉強熱心なお客さんが入ってきますが、ここで長居する人はまずいません。中央に配置されたテーブルのなるべく他人の邪魔にならなそうな場所に陣取り、勉強しました。気分転換したくなったら、窓の外を眺めると景色もしくは他のお客さんの楽しそうな姿を楽しむことができます。見ていると悲しくなる場合は、窓に背を向けて一心不乱に勉強に取り組むのがオススメです。
 その他、勉強できる場所があるとすれば、やはりカフェ風の空間であるミュージアムカフェ。ただここはお金を払って飲食する場所なので、あまり居座るのも悪いわけで。一方、ミュージアムショップが併設されているので人の出入りは多いですが、カフェで飲食してる人は実はあまりいないので席の確保には困りませんでした(芸術祭期間中なんかはちょっと事情が違うかもしれませんが…)。
 ちなみに滞在中、僕はミュージアムランチ、妻は本日のパスタをいただいたように記憶しています。ランチのその日のメインはハンバーグだったかな。

 そういえば、ミュージアムカフェは子ども連れの宿泊者に限り、ここでのディナーを用意しているらしいです。説明をよく読まずに子連れでもない我々は予約を入れようとしてしまってご迷惑をおかけしてしまいました。ここでのディナーが開放されたら食事のレパートリーが広がっていいのになあ…。現状、子連れでない宿泊客がここで夕食をとろうと思ったら、ラストオーダー間際に行ってパスタかカレーとプラス何かでお腹を満たしておくしかないと思います。

 なお、ハマりすぎないようにと1冊だけ持って行った小説は『プリズンホテル 夏』。試験勉強の重圧からか、こんなに読書を楽しく感じたときはありませんでした。


○深夜のアクシデント

 結婚式のときに泊まる予定にしていたのに台風に阻まれてしまったオーバル棟ですが、ちょっとここまで眺望がいいとは思っていませんでした。部屋からも存分に海が楽しめるし、外に出て宿泊上の屋上に上がるとさらにすごい眺めが拝めます。2泊目はミュージアム棟に泊まったのですが、別にミュージアム棟だって十分海が楽しめるのです。普通の「海の見える宿」を完全に凌駕したオーバルはまさに別次元の宿泊棟でした。

 さて、オーバルのその別次元具合を演出する大きなところを占めるのが、オーバル宿泊者専用のモノレールの存在です。オーバル棟には宿泊者以外は行けないことになっており、モノレールに試乗することすら叶いません。ようやく乗れたそのモノレールに興奮する我々。イメージとしては、斜行エレベータのような感じでボタンを押してモノレールを呼び、乗り込んでドアを閉めると動き始めるという仕組みになっています。運転技術等は不要です。当たり前か。

 しかし、このモノレールに夜、異変が起きたのです。
 パーク棟のテラスレストランで夕食をとり、パークラウンジでゆっくりしてからミュージアム棟まで送り届けてもらい、モノレール乗り場に到着した我々。乗り場には先客のおねーさんがひとり。ボタンも押してあるのでモノレールの到着を待ちます。しかし、いつまで経ってもこない。おねーさん曰く、さっきから全然こないんです、とのこと。僕はフロントまで行き、従業員の方にその旨告げました。従業員の方はモノレールのレールに降りて車両を探しに行ってくださいました。結果、

 途中でドアが開いちゃってたんですって。閉まってないと動かない仕組みになってるんですね。半ドアみたいな状態で出発して、それが途中で木の枝かなんかと触れ合った時に開いちゃったみたい。ともあれ、無事に乗り込むことができ、一緒に待ちぼうけてたおねーさんと少々の交流も持ちつつ部屋に帰ったのでありました。

 滞在中の食事は、朝食は2日ともミュージアムレストラン一扇の洋朝食。夕食は1日目がテラスレストラン海の星でのコース。2日目が一扇のコース。昼食は前述のようにミュージアムカフェで1回とりました。夕食コースのみお品書きを保存していたので以下に記載しておきます。ご参考まで。

<1日目夕食@テラスレストラン海の星> 
~テロワール~
・食前のお楽しみ
・瀬戸内海で水揚げされた天然鯛のマリネ
 ブルグール オレンジの泡
・直島産大葉のヴィシソワーズ
・メイン料理(本日の魚料理 又は 和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み ポレンタと共に
・プレデザート
・デザート
・コーヒー 又は 紅茶

<2日目夕食@ミュージアムレストラン一扇>
~海~
・前菜(車海老、長葱、酢味噌掛け、菊花蓮根、ままかり、烏賊紅葉和え、穴子昆布巻き、厚焼玉子、赤蒟蒻、銀杏)
・お椀(萩しんじょう、つる菜、柚子)
・お向(鯛薄造り)
・焚合(小芋饅頭、菊花餡、針柚子)
・焼物(かれい西京焼、サラダ)
・進肴(松茸茶碗蒸し)
・食事(じゃこ御飯、味噌汁、香の物)
・果物(無花果ワイン煮)


 どちらのコースも一番量の少ないコースですが、僕らの胃袋的には量は十分。テラスレストランのほうのコースには書いてないですが、パンがどんどんくるのでメニューから受ける印象よりおなかいっぱいになると思います。グルメでも大食漢でもない小柄な我々30代夫婦にはこれくらいがちょうどよい感じでした(和食のほうはもう少し少なくてもいいくらい)。

 
○ファンになる

 ベネッセハウスのMさんとは1日目に会えました。そういえばせっかくいいプレーヤーがあるのにCDも持ってこなかったなあ、とフロントに物色しにいったとき、後ろを振り向いたら笑顔で立っていらっしゃいました。

 僕は今まで自分が「常連になる」ということが苦手だと思っていました。店の人に覚えてもらって仲良くされ始めるとなんとなく行きにくくなってしまうのです。でも、ベネッセハウスでMさんにお世話になって、こうしてまた温かく迎えてもらって「ただいま」といえる宿を持っていることはうらやまれるべきことだなあと思いました。自分たちにとっての立派な財産だと。

 ベネッセハウスというホテルは、宿泊施設としてはいろんなハンディを負っていると思います。船でしか行けない島という立地。外見上リゾートといえる一方で、長期の連泊をしにくい食事事情。扱いの難しいアート作品を大量に抱え、施設の中核として維持管理していかなければならない状況。また、サービスの面でもベネッセハウスを超えるサービスを提供できる宿は他にもたくさんあります。なのに、なぜベネッセハウスが好きなのか。なぜここにだけ毎年わざわざ足を運ぶのか。

 それは、思い入れがあるからです。そして、僕らを受け入れてくれる宿の人からも僕らに対する思い入れが感じられるからです。僕らの期待に宿が応え続けてくれる限り、僕らはこのベネッセハウスを一番のお気に入りの宿として、ファンとして支え続けていけたらすごくいいな、と思ったのでありました。




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ベネッセハウス③ ~結婚式は台風とともに~

【データ】
訪問年月日
2011年9月某日から3泊

宿泊プラン
パークスイート2泊+パークダブル1泊(+妻の家族宿泊用でビーチスイート)
ホテルHPから予約(15時チェックイン、11時チェックアウト 食事なし)

料   金
まあ結婚式やりましたので…参考にはならないと思うので非公開です。


【宿泊記録】

○準備は1か月間

 結婚式の相談をしてから3ヶ月、延べ40通にわたるメールでのやり取りを経て、僕らの結婚式は徐々にできあがっていきました。
 と、書くとものすごく順調そうですが、ベネッセハウスのMさんからの「奥様のお名前はなんとお読みすれば?」という内容のメールを引っ越しを理由に1ヶ月強放置したため、あっという間に残りの準備期間は1ヶ月に。業を煮やしたMさんからは、料理の予算、NG食材、ケーキ入刀はやるか、島なので美容師の手配、卓上装花のイメージ…等、たくさんの宿題が届きました。段取りはMさんにお任せしてとにかく目の前の宿題をこなすこと!当面とにかくこれに集中して取り組んでいったのでした。

 とりあえず当初のプランとしては、料理の予算は15,000円程度。NG食材は、瀬戸内人なのに食べられない家族が多い牡蠣、妻がダメなわさびとたらこ、二人ともダメなからし、義父がダメな味噌とバターとチーズ…など。洋食なのにバターとチーズダメって大丈夫かなと思っていたら、さすがにバターはちょっとなら大丈夫かと聞かれました。ちなみにアレルギーだった場合は原料の大豆や牛乳も抜いたメニューにしてくださるそう。ヘアメイクは岡山側から美容師さんに船で来てもらうことにしました。
 会食は夜。Mさんは式の内容についてもいろいろ提案してくださったのですが、我々夫婦の極度の地味志向に埋もれていったアイデアは数知れず。ほんとすいませんでした。
 
 別途、僕らは自分たちでやらなきゃならんことを準備していきます。プロフィールビデオの作成は頼む人もいないので仕方なく自分で作ることにしました。ネットに自作の方法が出ていたりしたのですが、結局「ムービーシアター」というソフトを買ってきて作りました。写真も揃えて写真屋でデータ化してもらったり。また、総人数9名という超小規模な式ですが、案内状くらい出すかということで作って送付しました。家族それぞれへの記念品も用意し、僕らの結婚式はほぼ完成に近づいていたのでありました。


○台風接近

 仕事をなんとか片付け、いよいよ結婚式のために東京駅を出発しようとしたその時、1本の電話が。ベネッセハウスのMさんからです。不吉な予感とともに聞いたその声は思いがけない展開をもたらしました。

 「台風接近で島への船が出なくなります。どうされますか?」

 そう、珍しい双子の台風が日本を席巻していたその時、片割れが高知沖で進路を変え、瀬戸内海に向けてまっすぐ北上していたのでした。ホテルはホテルで、モノレールで隔離されたオーバル棟を閉鎖する予定とのこと。つまり、予定していた部屋には宿泊できないことになります。船もいつ運航を再開するかは現時点で不明。とりあえず、翌朝9時台の船で島に渡ることはできますが、次にいつ島に渡れるようになるかは分からないということでした。

 Mさんからの電話をいったん切った僕らは家族と連絡を取り始めます。明日みんな一緒に行くというのは都合的に無理なことを把握し、挙式の予定を当初予定していた日の翌日の昼に延期。とにかく時間を稼いで船の運航開始を待つ作戦としました。Mさんも快諾してくれ、当初オーバルに泊まることにしていた部屋をパークに振り替えてくれました。僕らは予定どおり翌日の最後の船で直島へ。暇そうだった妹も連れていってやることにし、祈るような気持ちで岡山に向かったのでありました。


○とにかく島へ

 翌朝、どう考えても不穏な天候の中、直島に渡る我々。宇野港の船待合にはこの船で島に渡っても帰る船はない旨の注意書きが出されています。島にさえ渡れればこっちのもの。ホテルでカンヅメなんて、結婚式の心配さえなければむしろ理想といってもいいでしょう。変な高揚感の中、なんとかベネッセハウスに到着。とりあえずはひと安心です。

 ホテル到着後、昼くらいまでは地中美術館がやってるということで、見学に。雨風がだんだん強くなってきました。激空きの地中美術館を満喫してホテルに戻ると、台風への備えが着々と進んでいます。パークラウンジの目の前にある、トーマス・シュトゥルートという作家の風になびく作品は動かないよう養生がされました。また、ベネッセハウスのランドマークにもなっている黄色いかぼちゃのオブジェはまさかの移動です。4人がかりで運んでいたのでかなり重いんでしょう。出迎えてくれたMさんから、実はあのかぼちゃは2号で、1号は昔の台風のときに波でさらわれて高松沖で見つかったとのことです。

 だんだんと台風らしい天気となり、外に出られない中、当初予約していたスパメニューだけでなく、何回かスパを利用してしまいました。あとで知ったのですが、ホテルの宿泊自体もキャンセルがだいぶ出たようでそもそも宿泊者が少ない。そんな中、もうそろそろその日の予約を締め切るつもりでフロントに連絡を入れようと受話器に手を伸ばしたタイミングで僕からの予約の電話があったんですよ、とスパのTさんがおっしゃっていました。

 普段は客室にないはずのテレビを設置してもらって天気予報を見ながら、翌々日の天気が回復することを願いつつゴロゴロと過ごしていたのでありました。


○挙式

 迎えた挙式当日。朝から快晴。船も運航を再開したとの連絡もありました。両家族もなんとかホテルに到着し、準備は万端。いよいよ結婚式を始めます。美容師さんもわざわざ船でやってきてくれ、メイクをほどこしてくださいました。妻も義妹も若干ギャル風になっててちょっと面白かったです。

 まずは挙式です。入場なんて恥ずかしいからいいです、と言ったので、時間になっておもむろに立ち上がる新郎・新婦。式は人前式風としました。司会は僕という驚愕の構成であります。

 まずはプロフィールビデオの上映で結婚式の雰囲気にもっていきます。正直、プロフィールビデオが完成したのは出発する日の午前中。間に合ってよかったあ。さすがソフト様様で、ド素人が作ってもそれなりのものができあがりました。
 事前にホテル内のシアターのようなところで上映してみたのですが、来館前に一度内容をチェックしてくれたスタッフの方が「何回も観たので、初めてお会いする気がしない」とおっしゃってくださいました。ありがたい話です。

 誓いの言葉はベネッセハウスのレポート用紙に書いたものを二人で読み上げます。しかし、涙もろい妻は開始3秒くらいで泣き始め、そのあとは自分ひとりで最後まで読みました。妻の家族は義父以外涙もろいので、義母と双子の義妹もすでに涙ぐんでいます。結婚の挨拶に行ったとき、緊張しながら話し始めた瞬間に妻と義母が泣き出して挨拶どころではなくなったのを思い出しました。

 その後、指輪の交換、結婚証明書へのサイン、ひとりひとり違った記念品の贈呈、となんとか形としては式のような格好になり、まあよかったかなと。締めの挨拶は別に用意していたエンディング用のビデオにメッセージを入れ、それで代えさせてもらいました。直接口に出して言うことも必要だと思う一方で、形に残すのもいいなと考えた結果です。ビデオの中身もなかなかのものだったんじゃないでしょうか、と自画自賛。そんな感じでささやかな僕らの挙式は終了したのでありました。

 挙式後は会食に移行。台風の影響で食材なんかも心配したのですが、天候回復で何とかなったようです。メニューはもはや覚えていませんが、メールのやり取りの中に残っていたのでそれをそのまま掲載します。さすがに豪華メニューでそろえていただきました。

・鮮魚のマリネ
・サザエのブルギニヨン
・フォアグラのフォンダン
・大葉の冷製スープ
・オマール海老のポワレ
・牛ランプ肉 ソースポワブルヴェール
・ミロワール ショコラ
・コーヒー または 紅茶

 途中、疲れたのか義父がひと休みするといったハプニングもありましたが、スタッフの方やMさんがつつがなく対応してくださり、大ごとにはならずに済みました。

 挙式の日は日曜日で父親は翌日から仕事。ほんとは1泊してもらう予定だったんですが、まあ今回は天候のせいなので仕方ありません。妻の家族だけ1泊して、僕の家族は日帰りで島をあとにしました。もう一度ちゃんと連れてきたいなあといまだに思っています。
 妻の家族はパークよりも海の近くにあるビーチ棟に宿泊。ここには泊まったことないので、遊びに行って中ですこし過ごさせてもらいました。ベネッセハウスのMさんの心遣いで、夕食はお弁当に。両家の家族とも楽しんでくれ、喜んでくれたようなのでもうそれが一番だったかなと。

 帰る日の朝、これまた快晴の空を映す輝く瀬戸内海はそれこそ家族ごと僕らを祝福してくれているかのようでした。なんてね。

 まだ第4弾の予定あり、です。





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